ミュージカル『エリザベート』2023博多座公演

ミュージカル『エリザベート』博多座公演、観てきました。帝国劇場は日程が合わず、御園座、梅田芸術劇場はチケット運がなく。唯一取れたチケットは1月28日 17時公演の3階最後列。初めての座席で見えるか不安でしたが、上から見下ろすため舞台全体が見やすいく、意外にも近く感じられ、とても集中して観劇することが出来ました。

キャストの感想

主演のエリザベート(愛称シシィ)は花總まりさん。宝塚の初演でもシシィを演じられた方。どうしても彼女のシシィが観たくて、博多座まで遠征することにしました。

2016年版のDVDは持っているのですが、やはり生の舞台では受ける印象が違いました。特に少女時代。実年齢を忘れる可憐さ。映像では幼さを強調しすぎる印象でしたが、舞台に存在するシシィはただひたすらに無垢で純粋。黄泉の帝王とハプスブルクの皇帝、2人が恋に落ちることに納得感がありました。

黄泉の帝王、トートは古川雄大さん。どこか宝塚の男役に通じる、ビジュアルの美しさ繊細さに惹かれました。それでもやはり男性なので、迫力もありますね。古川さんのトートは「死が人を愛する」という点に納得感がある役作り。特に『愛と死の輪舞』にそれを感じました。

ハプスブルク皇帝、フランツ・ヨーゼフ1世は佐藤隆紀さん。深みのある歌が特に晩年のフランツにぴったりだと感じました。

シシィとフランツの息子、ルドルフ役は甲斐翔真さん。ルドルフは若く線の細い俳優さんが演じるイメージがあったのですが、甲斐さんは割とがっしりした体格。史実の実年齢35歳と軍人であることを考えると、本当のルドルフに近いのかもですね。最後列のオペラからも汗が見える大熱演でした。

フランツの母、シシィの義母となるゾフィーは涼風真世さん。史実のゾフィーはその美しさと聡明さでのし上がった実力派なのですが、その通りと納得できる雰囲気です。歌も定評通りの上手さ。きれいなお声なのにしっかり老けてドスを効かせられるのが不思議でした。役作りとしてはコミカル過ぎる印象もありましたが、メインはあくまでシシィなのだと考えるとちょうどいい塩梅なのかなと思いました。

宝塚の男役さんはオペラ越しにもしっかり目が合うのがすごいと思ってたんですが、ゾフィーからばっちり睨まれてドキッとしました。もちろん、気のせいなんでしょうが、他の人とは目が合いませんのでテクニック? 不思議です。

シシィの母、ルドヴィカと娼館の主マダム・ヴォルフは未来優希さん。違う役を同じ方が。印象が全く違ってすごいです。

歴史上ではシシィの暗殺者、そして舞台上では狂言回しのルイジ・ルキーニ。黒羽麻璃央さんはテレビで見たことがあり、ちょっと変わってるけどイケメン好青年という印象。ルキーニとはかけ離れていたのでどうなるのだろうと心配だったのですが、立派に? 汚らしい狂人になっていました。ルキーニの歌は音程が難しいですが、安定していて、安心して聞けました。

シシィの父マックスは原慎一郎さん。優しいパパだけど、実はシシィの家庭教師とは浮気中。なるほどねと思う優しい雰囲気とかっこよさでした。

精神病院の患者、ヴィンディッシュ嬢は彩花まりさん。宝塚時代にも綺麗な方だと思っていたので、また舞台で見られて嬉しいです。

娼婦のマデレーネ、美麗さんがスタイルや所作を含めて美しく怪しく、見とれました。シシィとフランツの結婚式では貴族として一言歌っておられましたね。ハスキーで素敵なお声です。

舞台の感想

私が初めて見たエリザベートは宝塚版なので、比較するとセットはかなりシンプルに感じました。そしてストーリー、特に時間経過は理解しやすいです。金管楽器が外すことも多い印象ですが、今回気になったのは一度だけでほっとしました。

2016年の東宝版のDVDと比較して、生の芝居っぽさが増している気がしました。2016はもうちょっと宝塚的というか、型っぽさがあった印象です。

メインテーマ「死が人を愛する」「人が死を愛する」について、見るたびに印象が変わる不思議な舞台。今回は「死が人を愛する」とは奪うことでしかなく、そのためにトートは時々「これが欲しかったものなのか?」と逡巡しているように感じました。対して「人が死を愛する」とは、生き抜くことなのかなと、舞台でシシィそのものを生きている花總さんを見て思いました。

花總さんの集大成という触れ込み通り、大満足な舞台でした。それでもまた見たくなる、不思議な魅力。次の演者さんたちはどんな舞台を作り上げるのか楽しみでもあります。チケットが取れたらいいのですが、また観たいと思っています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました